ホワイトペーパー:IEEE 802.11ac 移行ガイド|enterprise.netscout.com

ホワイトペーパー:IEEE 802.11ac 移行ガイド

本書は、11ac テクノロジーに関する入門書および移行ガイドであり、展開を成功させるための推奨策、ベストプラクティス、およびヒントを提供しています。

    目次
  • はじめに
  • 11ac の基本
  • チャンネル幅
  • SU-MIMO と MU-MIMO
  • 空間ストリーム(SS)
  • 256 QAM
  • SNR
  • 11ac の利点
  • 有線の課題と検討事項
    11ac の展開
  • 総入れ替えと順次アップグレード
  • 古きを捨てる
  • 計画・診断ツール
  • 概要
  • 移行チェックリスト

はじめに

IEEE 802.11ac(単に「11ac」とも呼ばれる)が大流行しています。誰もがかっこいい新しいテクノロジーを試したがり、Wi-Fi は皆の関心リストの上位に位置しています。2012 年の第 4 四半期にベンダーが初のエンタープライズ・クラスの第 1 世代「Wave-1」アクセスポイント(AP)を販売して以来、11ac AP は猛スピードで飛ぶように売れています。11ac の派手な売り込みは、競争が激しい市場のせいで度を越しており、聞くところによると、11ac AP は小さなビルもひとっ飛びできるそうです。

Infonetics 社によると*、11ac が企業向け AP 市場を占めるシェア率が、2017 年末までに 80%、そして 2019 年末までに約 90% に到達するとのことです。
 

*無線 LAN 機器と WiF i端末の世界と地域毎の市場シェア、市場規模、市場予測:2014 年第 4 四半期
 

 

 

11n インフラストラクチャの所有者の多くは、あり合わせの物で間に合わせ、11ac「Wave-2」対応製品が発売されるまでアップグレードを先延ばしにしてきました。11n ネットワークは、2x2:2、3x3:2、または 3x3:3 の構成を問わず、ほとんどの場合、高いパフォーマンスを発揮できるように最適化が可能なため、今日の大多数の企業展開において十分でした。一方で 11ac は、多くの場合、あれば便利だが、なくてはならないアップグレードではないと言っても過言ではありません。時代遅れの 11n を展開することのマイナス面は、11n AP の初期モデルの多くが新しいプログラムで更新され、もはやサポートされなくなったため、セキュリティやパフォーマンス面で制限されてしまうことです。

本書は、11ac テクノロジーに関する入門書および移行ガイドであり、展開を成功させるための推奨策、ベストプラクティス、およびヒントを提供しています。本書の記述はすべて、エンタープライズクラスの Wi-Fi ソリューションを対象としており、コンシューマークラスの機器には当てはまらない場合があります。
 

11ac の基本

11ac は 5GHz 帯を使用する技術であるため、IEEE 802.11ac 規格では 2.4Ghz の ISM 帯の使用について規定していません。より広帯域のチャンネルを使用するには、より多くの周波数帯域幅が必要とされ、2.4GHz 帯では 83.5Mhz に限られています。2.4GHz 帯の 11ac PHY(物理層)仕様の実装は、メーカー独自となります。

11ac テクノロジーは、無線がすべてではありません。AP は、それぞれ CPU、RAM、フラッシュメモリなどを備えた小型コンピュータです。新世代の無線技術とともに、新しいソフトウェア機能も提供されます。これらの一部は、AP の CPU やコントローラーに大きく依存します。新型の 11ac デュアルラジオ AP の一部には、巨大な CPU(デュアルコアが多い)、大量の RAM、暗号化オフロード機能、Gigabit Ethernet デュアルポート、およびその他のハイエンドなハードウェア機能が搭載されています。

では、時代遅れの IEEE 802.11n(「11n」)を置き換えるほど、11ac が特別な理由は何でしょうか?この質問に正確に答えるには、11ac 製品が無線チップセットの能力に基づき、2 段階(「Wave-1」と「Wave-2」)でリリースされていることを理解する必要があります。下表は、Wave-1 と Wave-2 の技術の違いを要約しています。
 

PHY/特徴 802.11n Wave-1 802.11ac Wave-2 802.11ac
チャンネル幅 20、40 MHz 20、40 MHz 20、40、80、160MHz
空間ストリーム(SS) 1、2、3 2, 3 2, 3, 4
QAM 変調 64 QAM 256 QAM 256 QAM
MIMO タイプ SU-MIMO SU-MIMO MU-MIMO
MCS サポート MCS 0~23(1、2、3 空間ストリーム) MCS 0~9(1、2、3 空間ストリーム) MCS 0~9(1、2、3、4 空間ストリーム)
最大データ/レート 450Mbps 1.3Gbps 3.467Gbps
TxBF なし 可変 あり
MIMO:ストリーム 2x2:2、3x3:2、3x3:3 2x2:2、3x3:3 4x4:4*

*大手 Wi-Fi チップセット・メーカーが実装予定。
 

 

11ac Wave-1 AP およびクライアント・デバイスの販売実績は業界にとって大きな成功となっており、11ac Wave-2 デバイスが発売された後も、間違いなく売れ続けることでしょう。設計、製造、および認証と、新製品が発売されるまでに、多くの過程と時間を経ます。初期の 11ac Wave-2 AP は、しばらくの間は DFS 機能が備わらず、プログラムの安定性や機能もまだ実証されていません。
 

チャンネル幅

802.11n デバイスは、20MHz または 40MHz チャンネルをサポートできます。11ac Wave-1 デバイスは 20、40、および 80MHz チャンネルを、11ac Wave-2 デバイスは 20、40、80、および 160MHz チャンネルをそれぞれサポートします。5GHz(UNII)帯に連続するチャンネル空間が不足しているため、企業展開において 160MHz チャンネルは現在役に立っていません。ただし、2014 年 4 月 1 日 付けの FCC Report and Order (R&O) 14-30 では、米国内で最大 4 つのオーバーラップしない 160MHz チャンネルを可能にする変更が提案されています。他の国の場合は、規制当局の判断によって異なります。WiFiChannelSimulator.com で利用できる下のチャンネル・シミュレーターは、FCC R&O 以降にライセンスフリーで使用できるスペクトルを示しています。
 

提供元:Wireless Training and Solutions
 

 

 

Wi-Fi ネットワークのスループットを向上させる最も簡単な方法は、再利用できるワイド・チャンネルが十分にあることを前提に、チャンネル幅を 2 倍にすることです。チャンネル幅を 2 倍にすることは、チャンネルのスループット能力をおおよそ 2 倍にすることを意味します。ただし、スループットを増加させるとは、代償を払わなければなりません。チャンネル幅が 2 倍になると、チャンネル全体の最大出力が半減します。これは環境によっては問題にならないかもしれませんが、不要な技術的な課題を生じさせることになる場合もあります。また、チャンネル幅を 2 倍にすると、ノイズレベルが 3dB 増え、衝突が起きる確率も増えます。そのため、80MHz と 160MHz チャンネルは、通常ダイナミックになっています。AP は、RTS/CTS などの保護メカニズムを使用して、80 または 160MHz チャンネルを「クリア」にします。ワイドチャンネルの一部分だけが使用可能な場合、AP は最大限のスループットを確保するために、個々の送信のチャンネル幅を縮小させます。

80MHz や 160MHz のワイドチャンネルを使用できるからと言って、これらを使用すべきとは限りません。講堂、大宴会場、展示会場、空港、競技場など、高密度環境においては、チャンネルの使用効率を向上させるために、20MHz チャンネルの使用が推奨されます。開放的なオフィスエリアなどの低密度/高スループット環境では、合理的なチャンネル再利用計画を立て、十分なチャンネルがあることを前提に、5GHz 帯の 40MHz チャンネルのメリットを享受できるかもしれません。施設(支店など)に 1~2 つの AP しか配置せず、かつ最小限の干渉(変調および非変調)しかない場合、80MHz チャンネルも問題なく使用できる場合があります。現在のところ、160MHz チャンネルの妥当な用途は、指向性の高いポイント・ツー・ポイント接続以外にありません。高スループットが常に必要とされる特定の場所がある場合は、そのエリアの AP の 1 つを 80 MHz チャンネルを使用するように設定しても問題ありません。ただし、近接の AP がその 80MHz チャンネルを使用しないことが条件です。
 

SU-MIMO と MU-MIMO

すべての 11n デバイスは、シングルユーザー MIMO(SU-MIMO)技術を使用しています。つまり、アップリンクまたはダウンリンクを問わず、1 つのチャンネルで同時に送受信できるのは 1 端末に限定されます。11ac Wave-1 デバイスはSU-MIMO 技術を、11ac Wave-2 AP はマルチユーザー MIMO(MU-MIMO)技術をそれぞれ使用します。

MU-MIMO はダウンリンクのみ(AP からクライアントへ)の技術です。この技術は、送信ビームフォーミング(TxBF)テクノロジーを使用して複数の同時通信を可能にし、特定の場所で RF 信号を強め、その他の場所で無効にします。ほとんどの MU-MIMO 対応 AP は、3 または 4 端末の同時通信に対応できます。MU-MIMO 技術は、3SS または 4SS 対応の AP が複数の 1SS 対応クライアントをサポートしている場合に、MAC 効率を向上させます。
 

空間ストリーム(SS)

空間ストリーム(SS)とは、データ・ストリームを複数のストリームに分割し、同じチャンネルの複数の無線チェーンに同時に送信することができる技術です。
 

マルチパスとデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を使用することで、MIMO 対応受信機は、空間ストリームを復号化してデータ・ストリームを再構築します。11n および 11ac Wave-1 の両デバイスは最大 3SS までサポートでき、11ac Wave-2 ッデバイスは最大 4SS までサポートできます。
 

256 QAM

変調とは、データを符号化して搬送波に乗せるための技術です。11n では、64 QAM の変調方式までしか対応していないものの、11ac では 256 QAM がサポートされています。256 QAM は、かなり高い SNR(信号対雑音比)を必要とする高度な変調方式です。これが、わずか 40~50 フィート離れただけで、クライアント/AP 接続が 64 QAM に落ちてしまう理由です。右図は、64 QAM のコンステレーションを示しています。各点は 6 ビットを表しています。256 QAM のコンステレーションの各クワドラントには、64 の点があり、点あたり 8 ビットが符号化されています。
 

SNR

11ac のより高い MCS レートは、256QAM 変調を使用しているためです。MCS を参照する最善の場所は、MCSIndex.com です。チャンネル幅を 2 倍にすると、ノイズレベルが 3dB 増えるため、必然的に 80MHz チャンネルは 20MHz チャンネルよりもノイズレベルが 6dB 高くなるので注意してください。下表を参照すると、80MHz チャンネルの場合、11ac の最高の MCS レートである MCS9 を達成するためには少なくとも 37dB の SNR が必要であることが分かります。これは不当に高い SNR であり、十分なチャンネルの再利用なしでは、同一チャンネルの競合(干渉)が非常に多くなります。下表は、MCS レートと必要な SNR をマッピングするのに役立ちます。

提供元:RevolutionWiFi.net
 

 


11ac の利点

企業 Wi-Fi の一般的な展開では、クライント・デバイスは平均 5Mbps 以上の帯域幅を使用しません。当然ピーク時のスループットは 100Mbps 以上に急上昇する可能性がありますが、長時間にわたって高いスループットを維持する Wi-Fi クライアント・デバイスはごく少数です。これはつまり、最近の 11n の展開は、低密度なオフィス環境などには十分であることを意味します。11ac から高い ROI を実現できるかどうかは、11ac クライアント・デバイスにアップグレードし、Wi-Fi ネットワークの設計、展開、および構成を最適化できるかによります。よく最適化された 3x3:3 11n ネットワークは、展開先のクライアント・デバイス基盤が同じであれば、うまく設計されていない 3x3:3 11ac ネットワークよりもパフォーマンスに優れている場合があります。

11ac が本領を発揮でき、インフラのアップグレードが保証されていることが多いのは、次を含む高密度および/または高スループット環境です。

  • アリーナ
  • 円形劇場
  • 公会堂
  • 大宴会場
  • 球場
  • コンベンションセンター
  • 大教室
  • コンサートホール
  • カジノ
  • 講堂
  • 大会議室
  • 報道関係者専用エリア
  • 公共イベント
  • スタジアム
  • 展示会
  • 立会場

11ac AP は、無線通信の品質がより高く(より高い受信感度)、より高速な CPU を搭載し、メーカー最新のパフォーマンス機能をサポートしています。まだ実証されてはいませんが、11ac Wave-2 は、低価格デバイスおよびモバイル・デバイスの環境で MU-MIMO を使用し、MAC 効率を向上させることが期待されます。

11ac の展開における重要な側面は、11ac AP(Wave-1 と Wave-2 のどちらも)は 11n AP(全種)とシームレスに混在できることです。高密度/高スループットのエリアに 11ac AP を配置し、低密度/低スループットのエリアは 11n AP で対応するのが、業界のベストプラクティスです。また、一部の AP はワイドチャンネルを使用し、大部分は 20MHz チャンネルのみを使用するといった展開もよく見られます。これは、効率的なスペクトル使用を実現しながらも、特定のエリアでは非常に高いスループットを可能にする柔軟性も提供します。11n/11ac を混在させる時に注意すべきなのは、11n と 11ac AP が同じメーカーのものだったとしても、11n AP の CPU/RAM の限界により、サポートされる機能が異なるかもしれないことです。これはつまり、最先端の機能は特定エリアにしか実装できず、11n と 11ac を可能な限り分離させる(別の建物や拠点に配置する)など、設計上の制約につながることを意味します。
 

 

有線の課題と検討事項企業向け Wi-Fi 機器メーカーが、新技術製品を発表する時は、まず最初にハイエンドの AP を発売することが一般的です。第 1 世代のハイエンド AP が、最大能力で動作するには、多くの場合 802.3at(PoE+)が必要になります。通常、WLAN インフラ機器のメーカーは 802.3af(PoE)でフル動作するローエンド AP をすぐに発売し、続いてかろうじて PoE バジェットで動作できるミドルレンジの AP をリリースします。これは、さまざまな企業向け Wi-Fi 機器ベンダーが 11n および 11ac Wave-1 製品を発売する際に一貫して取ってきた販売戦略です。

11ac Wave-2 AP は、ハイパフォーマンスを発揮するように設計されており、大量の電力を消費する 2 つの新しい強化点が加えられています。最初の強化点は、4 つの空間ストリーム(4SS)です。4SS とは、同時に送受信できる無線チェーンが 4 つあることを意味します。これは速度を向上させるものの、消費電力量も大幅に増加します。2 つめの強化点は、CPU とメモリです。4SS のおかげで、より多くのデータを伝送できるようになったため、今度は AP の潜在スループットに到達できるように、十分に速い CPU とメモリが必要になります。CPU は、AP 内で最も電力を消費する構成要素です。

PoE+ は、Ethernet スイッチの長い購入サイクル(~10 年)が原因で、11ac の普及率と比べてまだ低めです。幸い、今はハイエンド AP 以外にも PoE+ の普及を助ける数多くの新たな促進要因が登場し始めています。産業用および商業用のさまざまなデバイスが、30W の PoE+ バジェットで動作します。この傾向により、AP メーカーは 15.4W の PoE バジェット内に収めることを心配せずに、ハイパフォーマンスにより焦点を当てることができます。

11ac AP には、1Gbps を超える Ethernet バックホール・リンクが必要という間違った情報が広まっています。はっきり言えば、11ac Wave -1 も 11ac Wave-2 も、1Gbps を超えるバックホール・リンクを必要としません。標準化団体による最近の取り組みにより、近い将来に 2.5Gbps や 5Gbps Ethernet が登場する可能性があるものの、デュアルラジオ・デュアルバンドの 11ac Wave-1 AP または 11ac Wave-2 AP をサポートするのにこれらの速度は必要ありません。

AP のスループットは、最高の条件下でもデータレートの約 50% です。法人顧客は 160MHz のワイドチャンネルは使用しませんし、80MHz チャンネルも特殊なケースでしか使用されません。最良の条件下で、リンクの両端が 11ac であると仮定すると、次の計算になります。

 

80MHz チャンネル x 4SS x 256QAM + SGI = 1.733 Gbps (データレート) x 50% = ~867Mbps

 

ここで明確にしておくことが重要なのは、ギガビット・イーサネットが全二重であることです。つまり、アップリンクが 1Gbps、そしてダウンリンクが 1Gbps で同時に通信できることを意味します。これに対して、上記の ~867Mbps は単方向であり、RF 干渉を考慮していません。また、1 つの AP に対して、1 つのクライアントしか通信していない(輻輳なし)ことを前提としています。このため、これらの数値を実現することは少し非現実的と言えます。

 

少し前までは、ほとんどのクライアントは送信するデータ(アップリンク)よりも受信するデータ(ダウンリンク)の方がはるかに多かったのですが、ソーシャル・メディア・サイトの人気の高まりにより、ほとんどのネットワークにおいて、アップリンク/ダウンリンクのトラフィック占有率が 50/50 近くになってきています。この 50/50 のスループットの共有は、各方向のトラフィック量を半分にすることを意味します(例: アップリンクが ~433Mbps、ダウンリンクが ~433Mbps)。その一方で、双方向のデータ・フローの場合は、AP はクライアントと競合することになり、802.11 のコンテンション・プロセスにより、オーバーヘッド(衝突時のバックオフなど)が加わります。これにより、現実的なスループットが最高でも一方向あたり 400Mbps 未満に落ち込みます。これは、1Gbps 接続のたったの ~40% しか使用されないことを意味します。

繰り返しになりますが、これは最高スループットであり、次の理由により、現実世界でこれを達成することは実質的に不可能と言えます。

  • 複数のクライアントがチャンネルにアクセスする時の衝突(同一チャンネル干渉)
  • 隣接チャンネル干渉(ACI)
  • RF 干渉源
  • 後方互換性のための保護メカニズム
  • PHY クライアント環境または無線インフラにおける異種混在
  • AP の CPU の限界
  • AP またはコントローラー上で実行されるコードの質の悪さ
  • 質の悪いクライアント・ドライバー

これはすべてを網羅した一覧ではありません。最善ではないパフォーマンスの原因となる技術的問題は、この他にもたくさんあります。30 台もの混在する 11n と 11ac クライアント・デバイスが 4x4:4 11ac Wave-2 AP(デュアルバンド、2.4GHz 11n ラジオ搭載)に関連付けられた現実的な展開(例: 40MHz x ≤3SS x 64QAM + SGI)において、総スループットは最高でも 150~200Mbps程度となります。スループットは、クライアントの組み合わせに完全に依存しており、11a/11b/11g で接続するクライアントが 1 つもあれば、AP の能力が大幅に低下します。

一部の Wi-Fi 機器ベンダーはすでにデュアル 5GHz 11ac AP を開発し始めているもの、ACI による著しいスループット低下なしに 2 つの 5GHz 無線を混在させることができるかはまだ実証されていません。ACI の問題を解決できたとしても、このような構成はチャンネルの選択肢を大幅に制限させることにもなります。これら 2 つ以上の無線を ACI なしに混在させることができる場合は、1Gbps バックホールのより効率的な使用が可能になります。それでも、非現実的な最適な条件下のピーク時でも、1Gbps リンクの約 80% しか達成できません(例:アップリンクが ~400Mbps + ~400Mbps、ダウンリンクが ~400Mbps + ~400Mbps)。

デュアルラジオ AP が 5GHz 3x3:3 11ac ラジオと 2.4GHz 3x3:3 11n ラジオを備える今日の市場において、考えられる最も高いスループットは、5GHz 11ac の場合、アップリンクとダウンリンクが ~400 Mbps、そして 2.4GHz 11n の場合、アップリンクとダウンリンクが ~40Mbps です。これは、最高条件下で、1Gbps リンクの使用率が 50% にも満たないことを意味します。複数のクライアントが AP に接続している 802.11 の競合、両帯域の干渉源(変調および非変調)、そして 80MHz ではなく 40MHz チャンネルを使用していることが原因で、この計算された双方向スループットの「440Mbps」は、どちらの方向もたちまち 50% 以上も低下することがあり得ます。
 


11ac の展開

11ac の展開を進めることにした場合、新規導入かアップグレードの 2 つの選択肢が与えられます。初めて Wi-Fi インフラを設置するのか、既存の展開をアップグレードするかのどちらかです。Wi-Fi の普及度を考えると、アップグレードを検討されている可能性の方が高いでしょう。また、既存の機器が耐用年数または有効寿命を迎えたかどうか、財務上の決断を迫られているかもしれません。
 

総入れ替えと順次アップグレード

予算が許すのであれば、「総入れ替え」という選択肢もあります。しかしこの時、従来の Single Input Single Output (SISO) システム(11a、11b、11g) から Multiple Input Multiple Output (MIMO) システム(11n および 11ac) へ移行する重要性を見落とすネットワーク・マネージャーもいます。これら 2 つの種類のシステムは全く別物であり、11a/b/g システムを 11n または 11ac システムに置き換える場合、新たなネットワークの設計、調査、および検証が必ず必要になります。11a、11b、または 11g AP が、お客様が満足するパフォーマンス水準を満たすことはあまりありません。11ac AP と 11n AP の価格は実質同じ(類似仕様の場合)であるため、レガシーの 11a/b/g AP から 11ac AP に移行することは、経済的にも理にかなっています。11n システムから 11ac システムに移行する場合も、新たなに設計、調査、検証が必要になる場合があります。11n の設計が最適化され、クライアント密度とユーザー・スループットの要件(アプリケーション要件に基づく)が同じ程度である場合、AP の設置場所の多くを再利用できる可能性があります。クライアント密度またはユーザー・スループットの要件が大きく増えた場合は、再設計が推奨されます。11ac ラジオの無線品質(受信感度など)は、同じような価格の 11n ラジオより著しく良いため、環境に合わせて AP の設定を調整する必要がある場合があります。

11ac Wave-2 AP を 11ac Wave-1 AP に完全に置き換える唯一のシナリオは、Wi-Fi インフラ・ベンダーを変える時(さまざまな理由により)くらいです。Wi-Fi インフラ全体の置き換えが予算上認められない場合、「順次アップグレード」が答えです。11n ネットワークを 11ac で、または 11ac Wave-1 ネットワークを 11ac Wave-2 で強化することにより、かなりのお金を節約しながら高い ROI を生むことができます。順次アップグレードの場合、顧客はメーカーが異なる多様な 11n と 11ac ハードウェアを同時に使用することになります。異種システムを分離(別の建物または拠点にするなど)し、高密度/高スループット要件がある場所に 11ac AP を配置するのがベストプラクティスです。
 

古きを捨てる

特定のデバイスやデバイスの種類をネットワークから取り除くことで、パフォーマンスが 10 倍向上する数少ない状況があります。ネットワークから 11a/b/g のクライアントと AP を取り除くことがまさにそれです。一部の MAC レイヤの保護メカニズムの必要性がなくなるからです。エンドユーザーが ROI を最大化し、11ac がもたらす利点を享受したい場合は、レガシーのクライアントと AP を積極的に取り除く必要があります。

クライアントがコンピュータやモバイル端末ではなく、医療業界の点滴ポンプ、小売業のレジ、または倉庫業の産業用スキャンガンといった 11a/g/n 対応の装置であった場合、11ac インフラは 11n と比べ、それほど目立つ利点がないかもしれません。
 

 

11n インフラをお持ちであれば、11ac にアップグレードする前に、できるだけ多くのクライアント・デバイスをアップグレード(11/a/b/g/n から 11ac へ)することをお勧めします。特に重要なのが、2.4Ghz のみに対応したクライアント・デバイスを排除し、今後の購入も止めることです。このためにも、購買担当者を技術プロセスに関与させ、この分野でのコスト削減の影響を理解させることが重要です。

複数のコンポーネント(マザーボード、RAM、ハードドライブ、CPU、冷却ファンなど)を検討する必要があるデスクトップ・コンピュータのアップグレード・プロセスを考えてみてください。通常、コンピュータを組み立てる時、その時点でお互いに適したコンポーネントが選ばれます。そしてアップグレードする時は、1 つのコンポーネントをアップグレードすると、他のほとんどもアップグレードすることになることがよくあります。Wi-Fi インフラ・システムでも同じことが言えます。AP を 11a/b/g または 11n(2x2:2)から 11ac Wave-2 4x4:4 にアップグレードする場合、AP のスループット能力および機能は、コントローラの処理能力を超えてしまう可能性があります。またシステムが、当時はそうでなくても、今はミッション・クリティカルになっていることもあります。このため、アップグレード時は、AP だけでなく、すべてのシステム・コンポーネント(WNMS、コントローラ、AP、センサー、ソフトウェア・サービスなど)を評価する方が賢明です。
 

計画・診断ツール

Wi-Fi ネットワークの設計は、顧客の要件と制約を徹底的かつ正確に評価することから始まる反復プロセスです。これらを把握したら、次のステップは最も時間効率の良い予測モデリングです。ネットワーク計画のこの部分に、労力を費やせば費やすほど、また正確にすればするほど(壁損失の測定、ソフトウェアを最大限に利用する方法の理解など)、設置後のネットワークのパフォーマンスが高くなります。AirMagnet プランナーとサーベイ Pro 製品は、必要なカバレッジ、スループット、およびモビリティの要件を満たすため、効率的かつ正確にネットワークをモデル化し、その能力を評価するツールを無線エンジニアに提供します。AirMagnet プランナー は、マップ校正、壁損失、2D & 3D 視覚化、マルチフロア・モデリング、減衰エリア、除外エリア、カスタマイズ可能なカラー・パレット、包括的な AP およびアンテナのパラメータなど、多様なモデリング機能を提供します。ほぼすべての機能がカスタマイズ可能で、CAD ファイルをはじめ、幅広いマップ形式にも対応しています。
 

図AirMagnet プランナーおよびサーベイ PRO ツール
 
 

802.11ac クライアントをサポートする必要がある環境を調査するサイト・サーベイを実施する時、新しいデータレートやチャンネル幅の利点を享受する場所を正確にマッピングし、確認するために 802.11ac アダプターを使用するべきです。その環境にスマート・デバイスのクライアントが存在する場合に、サーベイ・データの収集にスマート・デバイスを使用することが推奨されるのと同じです。これにより、標的となる場所が実際に 802.11ac の利点を享受し、パフォーマンスの改善が見られるかどうかを確認できます。

802.11n のみに対応した診断ツールでも、11ac ネットワークの一部の問題をトラブルシューティングできますが(ほとんどの管理フレームと制御フレームは、802.11g/n (2.4GHz) または 802.11a/n (5GHz) MCS レートで送信されるため)、ネットワークとそのパフォーマンスの全貌を把握するためには、AirMagnet WiFi アナライザなどの 802.11ac 対応の診断装置およびツールが欠かせません。診断ツールに 11ac チップセットが必要な最大の理由は、11ac チップセットは 11ac(VHT: Very High Throughput とも呼ぶ)に使われる変調方式、変調データ・フレーム、および 80MHz/160MHz チャンネル幅を理解しているからです。
 

図AirMagnet WiFi Analyzer PRO
 

現在、11ac 対応の診断ツールが販売され始めています。ハンドヘルド型(または類似の)装置ではなく、ソフトウェアベースの診断ツールであれば、市場にある多くのツール向けに 11ac クライアント・アダプターのドライバーが現在公開されています。11ac ラジオの品質と受信感度の向上により、11ac 対応の診断ツールにアップグレードすれば、間違いのない投資となります。診断ツールがよく聞こえれば聞こえるほど、より良い仕事をしてくれるのです。
 


概要

11ac には、さまざまな技術的改善(下記一覧を参照)が加えられているものの、その実際の能力については、現実的な目を持つことが重要です。これらそれぞれの強化点は、適切な環境であれば、通信効率を向上する潜在力がありますが、状況によっては、一部の強化点について宣伝される利益を実現できない場合もあります。

  • 最大 160MHz のワイドチャンネル
  • ダウンリンク MU-MIMO
  • 256QAM 変調
  • 4 空間ストリーム(4SS)
  • 距離対速度比の向上
  • より強力なハードウェア
  • 高密度の処理能力

高密度環境では、20MHz チャンネルの使用が推奨されます。MU-MIMO はまだ実績が足りなく、プロトコルのオーバーヘッドや複雑さにより、ダウンリンク・スループットがどれほど改善されるかについては、まだ疑問の余地があります。256QAM は最大 50 フィートの範囲でしか使用できず、多くの環境では役立たない可能性があります。4SS は、クライアント・デバイス(モバイル端末を除く)が 4 空間ストリームをサポートでき、かつ環境が空間ストリームの無相関化を十分にサポートしている場合に限り、役に立ちます。

11ac への移行を検討するにあたって、既存ネットワークの総入れ替え(別のベンダーを使用する可能性もあり)またはアップグレードのどちらかを選ぶ決断を迫られます。どのアプローチを選ぶかにかかわらず、成功の鍵の 1 つは、次を覚えておくことです。

  • 11ac と 11a/g は非常に異なる技術であり、それぞれが異なるタイプのネットワーク設計が必要であること
  • 11ac と 11n は似た技術を使用しているものの、11n 以降のハードウェアに大きな変更があったこと

デュアルラジオ 11ac AP には、5GHz 帯において 11n チップセットより高い性能を発揮するように改善された 11ac チップセットに加え、2.4GHz 帯においても、感度、干渉への影響、距離対速度性能が強化された 11n チップセットが搭載されています。

11ac への移行を検討している場合、可能な限り 2.4GHz ISM 帯の使用を減らすことを強く推奨します。2.4GHz から移行することで、ユーザー体験の向上、ネットワーク容量の増加、アプリケーションの障害やサポート・チケットの減少、および Wi-Fi インフラの総所有コストの大幅な削減を実現できます。

Wi-Fi ネットワークの設計は、最大の ROI を得るために、設置後の調整と継続的なモニタリングが必要な反復プロセスです。最適な AP の配置と設定、最小限の同一チャンネル干渉、最大パフォーマンス、そして持続的な WLAN の正常性を保証するためには、最先端の 802.11ac 設計、調査、およびトラブルシューティングの各種ツールが必要です。NetScout は、AirMagnet サーベイ、AirMagnet プランナー、スペクトラム XT、Wi-Fi アナライザ Pro、AirCheck Wi-Fi テスターなどの最新ツールを提供しており、お客様の 11ac への円滑な移行を支援します。
 

 
 
移行チェックリスト

チャンネル幅を検討する

  • 講堂、大宴会場、展示会場、空港、競技場など、高密度環境においては、チャンネルの使用効率を向上させるために、20MHz チャンネルの使用が推奨されます。開放的なオフィスエリアなどの低密度/高スループット環境では、合理的なチャンネル再利用計画を立て、十分なチャンネルがあることを前提に、5GHz 帯の 40MHz チャンネルのメリットを享受できるかもしれません。施設(支店など)に 1~2 つの AP しか配置せず、かつ最小限の干渉(変調および非変調)しかない場合、80MHz チャンネルも問題なく使用できる場合があります。現在のところ、160MHz チャンネルの妥当な用途は、指向性の高いポイント・ツー・ポイント接続以外にありません。高スループットが常に必要とされる特定の場所がある場合は、そのエリアの AP の 1 つを 80 MHz チャンネルを使用するように設定しても問題ありません。ただし、近接の AP がその 80MHz チャンネルを使用しないことが条件です。
高速データレートの達成について現実的な目を持つ
  • 80MHz チャンネルの場合、11ac の最高の MCS レートである MCS9 を達成するためには少なくとも 37dB の SNR が必要であることが分かります。これは不当に高い SNR であり、十分なチャンネルの再利用なしでは、同一チャンネルの競合(干渉)が非常に多くなります。
有線バックホールを評価する
  • はっきり言えば、11ac Wave -1 も 11ac Wave-2 も、1Gbps を超えるバックホール・リンクは必要ありません。
設計手法を決める
  • クライアント密度またはユーザー・スループットの要件が大きく増えた場合は、再設計が推奨されます。
  • 異種システムを分離(別の建物または拠点にするなど)し、高密度/高スループット要件がある場所に 11ac AP を配置するのがベストプラクティスです。
  • エンドユーザーが ROI を最大化し、11ac がもたらす利点を享受したい場合は、レガシーのクライアントと AP を積極的に取り除く必要があります。
適切なツールを選択する
  • 802.11ac クライアントをサポートする必要がある環境を調査するサイト・サーベイを実施する時、新しいデータレートやチャンネル幅の利点を享受する場所を正確にマッピングし、確認するために 802.11ac アダプターを使用するべきです。
  • ネットワークとのそのパフォーマンスの全貌を把握するには、802.11ac 対応の診断装置が必要です。

 


 
 
 
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