アプリケーション・ノート:VoLTE のトラブルシューティングのためのベスト・プラクティス|enterprise.netscout.com

アプリケーション・ノート:VoLTE のトラブルシューティングのためのベスト・プラクティス

はじめに

LTE を展開するサービス・プロバイダにとって、Voice over LTE (VoLTE) の成功は、それらのプロバイダの HD オーディオ/ビデオ・サービスを、iTalkBB、Phonepower、Skype、Viper などの他社の高速インターネット回線経由の音声アプリケーション/サービスと差別化するためのマイルストーンとなりました。VoLTE サービスは、加入者が要求する最も基本的なサービスであるため、これを成功させることは非常に重要です。また、障害が起こった場合、最も目立つサービスでもあります。そのため、最初から正しく展開することは極めて重要なことです。

このホワイトペーパーは、VoLTE を展開するエンジニアやテクニシャンに概要を提供します。このホワイトペーパーでは、主要なネットワーク要素と VoLTE コールにおけるその役割に加え、VoLTE 展開時に見られる代表的な問題について説明します。さらに、ベスト・プラクティスも紹介し、実際の LTE ネットワークにおける VoLTE の問題のトラブルシューティング時に注目すべき箇所を強調します。


VoLTE の主要なコンポーネント

Evolve Packet Core (EPC):eNodeB、SGW、MME、PGW

これらのコンポーネントは、ユーザーの機器がモバイル・ネットワークを移動するのに伴い、共に機能してデータ・ネットワークの加入者の接続を確立および維持します。IMS APN を介して 1 つまたは複数のベアラを作成する必要があり、VoLTE コールの際には UE に特殊な IP アドレスを割り当てる必要があります。

IP マルチメディア・サブシステム (IMS)

ネットワーク間のコールとメッセージング、AAA、およびルーティングをサポートするアプリケーション・サーバー、コール・セッション・コントローラ、メディア制御などの機能を備えています。SIP トラフィックは、EPC の後、IMS にルーティングされます。IMS は、SIP および RTP トラフィックをルーティングするために、受信者が常駐する 3G/PSTN/EPC の場所を特定します。

セッション・ボーダー管理

セッション・ボーダー管理は、IMS の一部で、EPC/IMS、および PSTN や 2/3G などの他のネットワーク間のセキュリティ、サービス品質、および受付/ルーティング制御を実施します。この機能は、さまざまなタイプのネットワークの Media Switching Center/メディア・ゲートウェイ (MSC/MGW) 間での、VoIP セッションの開始、実行、および終了の方法を制御します。メディア・ゲートウェイと共に機能して、インターネットワーキングのサポート、メディア・コーデック、および LTE と 2G/3G/PSTN 間の信号トラフィックの効果的な管理を提供します。LTE および 3G/PSTN 間の音声コーデックのトランスコーディングを実行する Media Resource Function Processer (MRFP) は、EPC および 2G/3G/PSTN 間の主要な要素です。

基本的な VoLTE コール・プロセスについて

  1. LTE への接続

    UE も、ネットワークに接続できるように、MME によって認証および承認される必要があります。
  2. IMS サービスへの接続と登録

    (a) UE は、IMS を使用して、デフォルト・ベアラを確立するようにデータ・サービスに要求します(新しい IPv4 または IPv6 アドレスが UE に割り当てられます)。(b) 次に、UE は、IMS を介してコールを他の VoLTE、3G/2G、または PSTN 加入者に向けることができるように、IMS に登録します。
  3. コールの実行

    UE がコールを開始すると、デフォルト・ベアラで SIP “招待” メッセージを送信することにより、受信者との接続を確立します。IMS は SIP メッセージを受信し、受信者 (LTE/3G/PSTN) を特定して接続を確立します。受信者が PSTN 上またはサービス・プロバイダのネットワーク上に位置する場合、SIP とメディアのルーティングは、SBC を介して行われ、コーデックのトランスコーディングは MRF で行われます。
  4. メディア・ベアラの確立

    IMS は、 RTP および RTCP プロトコル・ストリームで音声パケットを運ぶ専用のベアラの確立を開始するよう PGW/APN に指示します。3GPP 標準に基づき、品質管理指標 (QCI) のレベル 1 をボイス・ベアラに割り当てる必要があります。これで RTP(音声チャット)は、専用のベアラを介して転送されます。専用のベアラは音声通話の後、削除されます。

QCI リソースの種類 優先順位 パケット遅延割当量 エラーによるパケット損失率 サービスの例
1 GBR 2 100 ms 10-2 会話形式音声
2 4 150 ms 10-3 ビデオ・チャット(ライブ・ストリーム)
3 3 50 ms 10-3 リアルタイム・ゲーミング
4 5 300 ms 10-6 非会話形式ビデオ(バッファ・ストリーム)
5 GBR 以外 1 100 ms 10-6 IMS 信号
6 6 300 ms 10-6 ビデオ(バッファ・ストリーム)TCP ベース(www、電子メール、チャット、FTP、p2p ファイル共有、プログレッシブ・ビデオなど
7 7 100 ms 10-3 音声、ビデオ(ライブ・ストリーム)、対話式ゲーミング
8 8 300 ms 10-6 ビデオ(バッファ・ストリーム)TCP ベース(www、電子メール、チャット、FTP、p2p ファイル共有、プログレッシブ・ビデオなど
9 9

ベアラ

GTP-U ベースのトンネルで、EPC で加入者のデータ・トラフィックを運ぶために作成されます。加入者の機器がネットワークに接続され、PDN ゲートウェイ (PGW) を介してデータ・サービスへの接続を確立すると、そのデータ・サービスの基本通信プロトコルを運ぶためにデフォルトのベアラが作成されます。作成されるベアラには Guaranteed Bit Rate (GBR) と non-Guaranteed Bit Rate (nGBR) の 2 種類があります。GBR ベアラは、ジッター、voice over RTP など、パケットがドロップされやすいトラフィックを運ぶために保証された帯域幅を割り当てられます。音声を運ぶ GBR は、多くのリソースを消費するため、VoLTE コールの成功時に作成され、コールの終了と同時に削除されます。nGBR は、通常、基本的なリソースを要するインターネット・トラフィックなどの普通のデータ・トラフィック用に作成されます。ほとんどのデフォルト・ベアラ(SIP トラフィックがフロー・オーバーする VoLTE や重要性の低いインターネット・サービス)は nGBR です。

品質管理指標 (QCI):

QoS パラメータ(パケット遅延および損失の割当量)のほか、各ベアラの優先順位クラスを示します。QCI の割当は、HSS での加入者のプロファイル、およびサービス・プロバイダによって設定されたデータ・サービスに基づきます。3GPP は、推奨される 9 個の QCI 値を参考のために提供していますが、サービス・プロバイダはデータ・サービスに独自の QCI を割り当てることができます。

VoLTE の課題

  1. 高トラフィック・ボリューム

    すべての VoLTE トラフィックは IP ベースです。コール信号は、TCP/SIP に基づいており、オーディオは AMR-WB をオーディオ・コーデックとして UDP/RTP で 運ばれます。これらの VoLTE IP フローは、ビデオ・ストリーミングやインターネット・トラフィックを含む、LTE コアのその他すべての IP データ・トラフィック・フローに埋もれます。

  2. 異なるパス

    VoLTE コールが発生すると、データ・ベアラを構築した制御信号はメディア・トラフィックとは異なるデータ・パスを通過します。加えて、SIP 信号およびメディア・トラフィックも EPC の後で異なるパスおよびネットワーク要素を通ります。VoLTE コールのセットアップと品質の問題のトラブルシューティングには、制御信号と作成したユーザー・ベアラ間での可視性と、関連付けが必要です。

  3. セグメント間の可視性

    オーディオの QoS は、EPC で複数のインターフェイス内に専用のベアラを動的に作成することによって、確保することができます。オーディオ品質問題のエンドツーエンドの根本原因解析には、複数のセグメント間で確立された QCI パラメータへの関連付けと可視性が必要です。

  4. 非対称メディア・フローの可視性

    EPC 内または EPC の周囲の各方向の RTP フローに異なる VLAN が割り当てられることがあります。エンジニアは、すべての RTP パケットへの可視性を確保するために、この非対称性にかかわらず、SIP フローと RTP フローを関連付けて、パケットを抽出することができなければなりません。異常な VoLTE コール・ドロップをトラブルシューティングする場合、エンジニアはパケットを抽出して RTP ペイロードのタイミングと動作を解析する必要があります。

VoLTE のトラブルシューティングのためのベスト・プラクティス

  1. まず、c プレーンおよび u プレーン インターフェイス全体のトラフィックの可視性を得るためにトラフィックに接続して、キャプチャします。通常、VSS Monitoring や Brocade 製などの集約スイッチは、少ない待ち時間で、ツールへのトラフィックのフィルタ、集約、および負荷分散を行うことができます。

  2. キャプチャしたトラフィックから、VoLTE に関連するベアラのセットアップ、および設定された QoS パラメータを解析します。

  3. 2G/3G/PSTN へのコールについて、EPC から IMS および SBC までの SIP フローを解析します。

  4. CDMA/PSTN へのコールについて、EPC、および MRFP および SBC のインターフェイスで行われたコールに関連付けられた RTP フローを追跡します。

Network Time Machine は、20 Gbps までの高パフォーマンス・パケット・キャプチャ機能を提供します。この機能には、c プレーンと u プレーン、および SIP と RTP を関連付けるキャプチャ後の解析も含まれているため、ユーザーは時間を遡って、VoLTE の問題のエンドツーエンドの根本原因解析を行うことができます。

時刻同期の検討事項

すべてのトラフィックが、トラフィックのタイムスタンプが同期されるのと同じデバイス上でキャプチャされない場合、すべての解析、c-plane と u-plane の相関関係、および SIP から RTP へのトラフィックは困難になることがあります。複数のキャプチャ・デバイスを使用する場合は、外部 NTP または PTP/GPS クロック・ソースを使用してキャプチャ・デバイスのタイムスタンプ・メカニズムを同期する必要があります。あるいは、高度な集約スイッチ(VSS モニタリングからのスイッチなど)が外部クロック・ソースを受け入れ、タイムスタンプをパケットのトレイラーに追加することもできます。相関性のある解析用にエクスポートする場合に、パケットの再構築用に用意されたタイムスタンプを使用するキャプチャ・デバイスがあれば、エンジニアは作業がしやすくなります。

シナリオ 1

ユーザーがまったくコールできない。

  • デフォルトのベアラが設定されていなかった
  • ユーザーが IMS に登録していなかった(認証問題、IMS のオーバーロード)

これらの問題については、S1 および S11 インターフェイスに接続し、UE の初期接続とベアラ設定プロセスを確認するほか、UE からの SIP フローがあるかどうかを調べます。Network Time Machine などのアナライザーでは、S1 および S11 でのすべてのトラフィックを最大 20Gbps までキャプチャし、必要な UE を選択できるほか、IMS でのデフォルトのベアラと専用ベアラの設定手順を表示することができます。

シナリオ2

ユーザーが PSTN ユーザーにコールできない理由

IMS に対応しているため、VoLTE 加入者からのコールは、PSTN にルートすることができます。これに失敗すると、コール設定プロセスが失敗したかどうか、またどこで失敗したかを特定するために、各セグメントからの SIP フローをエンドツーエンドからキャプチャして調べる必要があります。EPC を担当するエンジニアにとって、IMS と地域コアの間(PGW とIMS との間など)の分界点の周囲や SBC の周囲、およびメディア変換用の MRFP 全体の信号トラフィックをキャプチャすることは重要です。コール・セットアップ時間のエラーと遅延が発生し、パケットのペイロードがエラーの発生元の根本原因を解析することで確認されます。

トラブルシューティング中は、エラーを示した SIP フローを探してください。SIP 原因コードには、503 エラー "Service Not Available" などのコール・エラーが発生した理由に関するヒントが表示されます。このエラーは、サービスがオーバーロードが原因で使用できないか、誤って設定されているかを意味します。

Network Time Machine はキャプチャされた SIP トラフィックを解析し、SIP エラーとエラーをトリガーしたコールの統計を表示できます。

テスト・ソリューションでは、設定された専用ベアラの QCI 値、および 802.1pq、DSCP、MPLS パラメーターなど専用ベアラ内のフローの実際の CoS 関連パラメーターを、ネットワークの各 u-plane インターフェイス全体に表示することができます。

NTM では、ユーザーは検査された VoLTE コール用の c-plane ベアラ設定を観察できます。上記の例では、ID#6 の専用ベアラは QCI が 1 でなく 5 で設定されており、GBR と MBR の値を持たない nGBR ベアラです。コールの MOS スコアがビジー状態のトラフィック期間中に不良であった場合は、これが根本原因である可能性があります。

OWA 問題をトラブルシューティングする場合、エンジニアは SIP と RTP パケットの両方を抽出して、BYE メッセージ内の理由フィールドを検査する場合があります。たとえば、UE から発生した RTP/RTCP タイムアウトが原因で発生した理由は、MRFP がオーディオを有効な状態に維持するために無音圧縮パケットを送信せず、10 秒後に RTP タイムアウトが発生したことが原因である場合があります。

まとめ:

VoLTE は LTE を導入するサービス・プロバイダーにとって非常に重要なアプリケーションです。サービスを管理するには、エンジニアは過負荷下でもトラフィックに対する可視性を提供し、問題をすばやく検証して根本原因の解析用にパケットを抽出できるように u-plane を c-plane に、SIP を RTP にそれぞれ関連付けることができる適切なツールが必要です。

Network Time Machine は高速なキャプチャと簡単な導入を実現するほか、優れた解析により、エンジニアは VoLTE 問題の根本原因を明らかにするパケットをすばやくキャプチャして可視化できます。

 
 
Powered By OneLink